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カムイワッカ湯の滝の有料化について思う
無料とか有料とか
2023年からカムイワッカ湯の滝の利用は事前にwebサイトから申込、レクチャー受講が必須となり「有料」の方針となった。
弊社のSNSにも有料化に伴う案内を掲載したが、少しネガティブなコメントが入った。
「無料のものを有料にする。」
こうした変化の際にネガティブな反応があるのは仕方がないことだと思う。
一方で「無料のものを有料にする」には理由がある。そして少なくない労力がかかる。
知床では「無料」から「有料」になった先例に知床五湖がある。
知床国立公園内でのヒグマ目撃件数の増加が見られ始めたのが1995年。
その後、知床五湖でも頻繁にヒグマとの遭遇が相次ぎ、2004年からは遊歩道の長期閉鎖も相次いだ。
年間40万人もの観光客が訪れる場所でのヒグマ遭遇の多発と遊歩道の長期閉鎖。
その安全性を保つため、特に遭遇が多発する5月10日~7月31日は「ヒグマ活動期」となり、すべての湖をめぐる遊歩道は有料のガイドツアーのみの立入りとなった。
この時の「有料化」は約4年もの年月をかけ、地域住民を含めた各関係団体と協議を重ねて制度設計し2011年から導入され、現在に至る。しかしこの後数年はネガティブな反応が続いた。
こうした有料化への動きを促したものは「放置できないレベルまで高まった事故発生への危惧」からである
そして現在、知床五湖周辺のヒグマ目撃件数は制度施行後の2011年からさらに増加傾向で、今は5月~11月の7か月間の遭遇件数は150件前後で推移している。
さて本題であるカムイワッカ湯の滝に目を向けよう。
この地域は活火山である硫黄山の麓。狭い知床半島に位置する山なので麓付近でも火山活動が見られ、周辺は常に落石が続いている地質の脆い地域。
カムイワッカ湯の滝のさらに半島先端側にある知床大橋は知床らしい地形が望める景勝地であったが、道路への落石が相次いだことから2006年からカムイワッカ湯の滝から先は一般車両通行止めが継続している。
そして、落石についてはカムイワッカ湯の滝も例外ではなく、特に融雪増水後は毎年のように新しい岩が上流から供給され、川の中の岩の配置が変わるほどである(あくまでガイド目線)。
カムイワッカ湯の滝も2006年から1の滝よりも上流側の立ち入りが規制された。
特に約15名前後が肩まで入浴できる大きな滝つぼがあったこの場所を象徴する4の滝が、落石によりすべて埋まったことも規制へ至った要因である。
こうした状況の中で、一部解放されていた1の滝下流の区間でも新たな落石が発生。2020年以降、土地所有者は全面立入禁止を検討する事態となったが、各種調査や新たなルール作りの模索が始まり、2023年7月、完全事前予約制のアドベンチャーアクティビティとしてリニューアルされ、18年ぶりに4の滝まで開放されることになる。
ここでも有料化への動きを促したものは「放置できないレベルまで高まった事故発生への危惧」だ。
2023年、利用可能期間前の立入りが散見された。2022年までは6月からの自由利用で、かつ監視員がいない状況では容易に立ち入れるため、こうした立入りは避けられないのかもしれない。
さらに「無料」のものが「有料」になった直後や、前年までの制度が変化した後は、こうした混沌が一定の頻度で発生するのであろう。
ただ一方でこうした立入りが事故につながった場合、立入り者は社会的な非難を浴びるだけでなく、新たな取組をも皆無にする。
今回の制度期間は10月1日まで。その後カムイワッカ湯の滝へ立ち入ることは避けていただきたいと切に思います。
このあとは、「18年ぶりに4の滝まで行ってみたら気づいたこと」です。
*足元は靴下のみでは厳しいです!
知床のウトロ地区にはカムイワッカ湯の滝用として販売されている靴下がありますが、写真の通り、1の滝より上流は細かく尖った石ばかり。
2022年まで一部解放されていた1の滝付近の区間だけならこの靴下でもOKですが、4の滝まで行くには不十分と感じています。
ガイド業者によっては履物を用意していないこともありますので、ご予約時は履物のレンタルがあるか否かは要チェックです。
ご自身で行く際も、靴下やはだしで行くことはおススメしません!
*酸性強いです!
肌が弱い方、カラダに傷がある方、水虫の方(笑)とても浸みます。
顔を洗うにも注意が必要です。目に入るととても痛いです。
ふうーと滝つぼに入りタオルを頭に乗せてうっかりと顔を拭う。
日本人はやりがちですが、気をつけてくださいね。
肌が弱くなくてもヒリヒリとすることがあります。また、着衣に水が跳ねると稀にですが、その部分だけ脱色することもあります。
また貴金属の変質にも注意!真っ黒な十円玉が3分でピカピカになるほどの水質です。
最後になりますが楽しい滝登りを継続して楽しめるよう、くれぐれも期間外や時間外の身勝手な立入りはご遠慮くださいませ。ルールや予約などは下記webサイトにてご確認いただけます。